ブレッドジャーナリストとしての活動をスタートするきっかけとなったのは「All About」のパンのガイド。パンと関わりのある店や人を訪れて、取材をして、写真を撮って、文章を書き、記事として読者に紹介する仕事です。”ブレッドジャーナリスト”という肩書きは、ジャーナリストである友人につけてもらいました。当初はその肩書きを名乗ることに消極的でしたが、「Bread Journal」を10年も続けてからは、「私はジャーナルを発信しているジャーナリストだ」と胸を張ることができました。旬なパンの情報のほか、どのような人がどんな想いでパンをつくっているのか、どうやったら買ったパンをおいしく食べることができるのかなど、暮らしのなかでのパンとの幸せな付き合い方を紹介しています。
人気のパン屋さんには、なぜこんなにも心を动かす力があるんだろう。そんな兴味から始めた职人さんの取材。さまざまな话を伺ううちに、理想や梦だけではなく、つくり手の悲痛な叫びが闻こえてきました。つくりたいパンと売れるパンとのギャップ、饱きられないように次々と新しいパンを生み出さなければならない苦しみ。いつしか、フランス语のパンを表す笔补颈苍が、时にはペイン(痛み)と読めるようになってしまいました。
パンに対して真っ直ぐに向き合っているからこそ生じる痛み。そんなつくり手の姿を镜として自分を省みることがあります。自分はジャーナリストという记事の“つくり手”として真っ直ぐに仕事と向き合っているか。パンの话から始まった取材ですが、喜びも痛みも、その想いをすべて闻くうちに、最后にはその人の人生に强く惹かれている自分がいるんです。だからこそ、パンを通して见えたつくり手の想いまでも、记事として伝えていきたいと思っています。
500円玉がひとつあれば、职人魂に触れることができたり、世界各地のパンを食べて旅行気分が味わえたり、おいしいトーストで最高の朝を迎えられたり。パンという言叶は、たったの二文字ですが、人によって连想することはさまざまで、いろんな可能性があります。小さいけれど、确かな幸せが得られる。そこがパンの魅力なのです。
朝は必ずパンを食べます。着书『日々のパン手帖』でも、いくつかご绍介しているのですが、パンの食べ方のなかではタルティーヌが好きです。季节の果物やチーズなどをのせて、手軽においしく食べられるのがいいですね。常备しておきたいのは、“真っ白なシャツ”のように何を合わせてもしっくりと驯染むシンプルなパン。そんなパンに好きなものを好きなだけのせるんです。そんな风に、好みに合わせて自己流で楽しむのが、理想的なパンの楽しみ方だと思います。
试食としていただくときは、まずパン全体のかたちを见ます。次に手に持ってみて重さを感じてみます。次はスライスして香りを确かめるとともに、パンの内侧の様子“内相”を确认します。そして、ようやく味わうんです。家で试食するときは、必ずトースターで焼くようにしています。なるべく焼きたてのおいしさを再现したいので。そして、食べきれなかったら冷冻库で保存します。我が家の冷蔵库には、いつも数种类のパンがストックされていますよ。
“おいしい”の基準は人それぞれです。あえて挙げるとしたら、食べると心と体が気持ちよくて幸せな感じになるということでしょうか。そう、おいしいパンは小さな幸せを与えてくれるんです。
私がおいしいと思うパンの共通点は、まず小麦粉本来の香りがすること。そして、食感にメリハリがあること。カリッとしていてモチッとしているといった、“クラスト”という皮の部分と、“クラム”という内侧の部分の、それぞれの食感にコントラストがあるほうが、おいしく感じます。
そして、适度に水分をふくんでしっとりとしているパンが好きです。具体的に挙げるとしたら、ロデヴやリュスティック。特に、ドンクの技术顾问である仁瓶利夫さんのロデヴとリュスティックは本当においしいと思います。さまざまな食材と一绪に食べておいしいのはもちろんのこと、パンだけでも饱きずに食べられるのはすごいな、と。
私は特に、作り手の人生が垣间见えるパンが好きなんです。フランスのパンに惹かれて、それを受け継ごうと现地を访れて技术を学んできた先达がいたから、今の日本にこれほど多くのパンが并んでいるのだと思います。
最近では、つくり手と食べ手の距离が近いパン屋さんに心を引かれます。农家の方が一生悬命育てた材料を使って、お客さんの颜を思い浮かべながらパンをつくる。「あの人の材料を使うなら、あの人が食べるなら」と一生悬命つくられたパンなら、その人の诚実な人生が透けて见えて、どれを食べてもおいしく感じるんです。
それは、例えて言うならおかあさんの料理。究极の信頼関係のもとにつくられたパンなのだと思います。职人の世界は逃げも隠れもできない、见栄もハッタリも効かない世界。自分が作っているパンにありったけの情热を注ぎ、仕事に诚実で真面目な人たちの姿は、本当にすてきだなと思います。
おいしいパンをつくる职人は、自分たちのパンのおいしい食べ方を知っています。だから、パン屋さんにカフェが併设されたベーカリーカフェでは、イチオシの食べ方でパンが提供されており、その店のパンのおいしい食べ方を学ぶことができるんです。
サンドイッチやタルティーヌでさまざまな食材との组み合わせのアイデアを得たり、饮み物との组み合わせ方を知ることができたり。カフェで食べてみて、おいしかったものを帰りに买っていくのは、とても上手なパンの选び方です。なかには盛り合わせプレートを提供しているカフェもあり、いろいろ试せて失败なく好みのパンを购入できるのでうれしいですね。
パンを购入するときは、まずお店いち押しのものは必ず买うようにします。あとは食パンやカンパーニュなど、“白いシャツ系”のパンを。そして、「おいしそう!」とピンときたものを买います。迷ったときは、お店の人に何がおすすめかを闻くのもいいでしょう。きっと、おいしい食べ方も教えてくれるはずですよ。
フランスのモンペリエから约40办尘北西にある小さな町の名を冠したこのパンの原型は、计量も成形もしないのだとか。しっかりとした外皮と、水分が多くモチモチとした独特の食感が特徴的で、リピーターが多く、わざわざ予约するお客さんもいるという人気のパンです。
水分が多く生地を练らないことが特徴で、パン生地にストレスを与えることなくゆっくりと长时间発酵させてつくります。名前の通り「野趣的な风味」を感じるこのパンも予约される方が多いたいへん人気のパンです。
フランスパンの生地にバターを折り込み、軽い食感に仕上げてあります。中央にほんのりと塩気を感じる甘いクリームチーズをトッピング。朝食やティータイムにぴったりのこのパンは自由が丘店のオリジナルです。